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日本ピーマック株式会社

プロジェクトストーリー

Vol.2京王プラザホテル

省コスト省スペースが叶う空調システムで、
インバウンドからビジネスまで幅広いお客さまにおもてなし

ホテル名 京王プラザホテル
住所 東京都新宿区西新宿2-2-1
開業年 1971年6月
客室数 1435

中間期の空調問題を重く
受け止めPAFMACを導入

 京王プラザホテルは1971年6月、地上47階建ての新宿新都心の超高層ビル第一号として開業。1980年には地上35階建ての南館も開業し、総客室数1435室、レストラン、バーラウンジなど22カ所の飲食施設、さらに中・小宴会場33室、大宴会場3室、結婚式場3室を付帯する全国屈指の大規模シティホテルとして営業している。近年ではインバウンドの増加に伴い宿泊需要も堅調で、平均客室稼働率は80%を超える好調ぶりだという。その好調の裏側には老舗ブランドに慢心せず、マーケティングやスタッフの教育はもとより、積極的に設備投資して時代に則したクオリティーを求めていく姿勢が垣間見える。
 京王プラザホテルが建設された当時の空調用冷温水配管は二管式と呼ばれる配管設備が主流であったが、建築時の既存二管式冷温水配管システムを活かしながら、通年冷暖房フリーを可能にする日本ピーマック㈱のPAFMACを採用したのだ。この空調設備工事に踏み切った理由について京王プラザホテル 施設部副部長兼施設支配人の野呂 敏氏は次のように話す。
 「京王プラザホテルの建つ西新宿の超高層ビル群は、1971年から日本最大の新宿地域冷暖房センターから送られてくる冷水(4℃)と蒸気(0.9Mpa 200℃)エネルギーの供給を受けてます。ここから送られてきている冷水と蒸気は館内各所の機械室に設置されているプレート式熱交換器で熱交換されて二管式冷温水配管により客室等のファンコイルユニットへ送られています。
 二管式冷温水配管とは、ファンコイルユニットへ分配する冷水・温水の配管が往き・還り各1本、計2本の配管方式をいいますが、冷水と温水は季節により切り替える仕組みになっているため、どちらか一方しか送ることができなく、冷房暖房の同時運転はできません。そこで季節の中間期に当たる3月中旬~5月末までと11月上旬~12月中旬までは、お客さまに快適な空間を提供する上で空調の運転管理が難しい時期となっていました。というのも、二管式冷温水配管に冷水を送っている間にもし、お客さまから『風邪ぎみなので客室に暖房を入れたい』などのリクエストがあった場合に個別での対応ができないからです。以前は、お客さまが寒いと言われれば毛布や温風器を貸し出し、暑いときには扇風機を貸し出すなどの対応をしていました。

 こうした中間期に発生する客室からのご要望は、多いときで1日20件くらいのときもありました。そこで、当社では商品価値向上の一環として日本ピーマック社製のハイブリッド式ファンコイルユニットPAFMACを採用することにしました」。
 PAFMACは既存の二管式冷温水配管をそのまま利用して本体を設置できるため、室内に設置したファンコイルユニット(冷暖房用二次空調設備)の機能を活かして、不足した部分をエバポレーター(冷媒式熱蒸発器)で補うハイブリッド式ファンコイルユニットであり、常に安定した年間空調(冷暖房運転)を可能にするのだ。

試験導入でデータを検証し
カスタマイズで電気代抑制に成功

 2009年の初導入に当たって京王プラザホテルでは、その前年に試験導入として客室4室にPAFMACを設置し、PAFMACの製造元である日本ピーマック、およびその親会社の高砂熱学工業㈱と三社が協力して1年をかけてさまざまなデータ収集を行なったという。
 「当社が導入する前に、既にPAFMACが導入されているホテルがありましたから、同業他社の協力を得ていくつかのホテルのリサーチもしました。当ホテルは1435室あるので導入については慎重になりました。というものPAFMACのユニットに内蔵されているコンプレッサーの消費電力は100v・0.48kwなので、このコンプレッサーが1435室すべてに設置して稼動したら莫大な電気使用量が発生し、ランニングコストが膨らみホテル経営の影響が懸念されました。
 そこで、当社の実験ではまず0.48kwのコンプレッサーが1年間でどのような動きをするのかを調べました。もちろんメーカーが出している数値も信じていますが、建物の特性もそれぞれ違うため、実際に客室に設置した状態でのPAFMACの稼働データを取り、自社の検証が必要でした。もともとインバータで周波数制御がかけられるように設計されていましたが、その周波数をどこに設定するかを1年間の実験期間を経て0.124kwという数値を導き出しました。
 また、当初はコンプレッサーが年中高稼働で運転し続けるのではと警戒していましたが、実際は1日のうち西日が当たって客室が暑くなっているときや、通常24℃に設定している室温を暑いと感じたお客さまが低めに温度設定を変えたときなど、通常のファンコイルユニットで足りない部分だけコンプレッサーが運転するので、心配したほど電気使用量は跳ね上がらないことも分かりました。冷温水コイルとエバポレーター(冷媒コイル)のハイブリッド構造により、この結果が出たのだと実感しました。こういったことを1年かけて検証した結果、導入に踏み切ったのです」。
 本館は2009年から客室のリニューアル計画に合わせてPAFMACを導入開始。現在、約980室のうち大半が導入済みで、2019年には本館のすべての客室への導入が完了するという。南館455室については、2011・2014・2015年の3年間をかけて全室導入を完了している。
 「PAFMACを導入した客室からは、室温に対するご要望はなくなり、施設部が懸念していた電気使用量も想定していたよりかなり少なく抑えることができました。また、既存のファンコイルユニットに比べPAFMACはとても複雑な構造になっているので、故障した際に遠方監視システムにより、速やかに中央監視室のTACS(集中監視盤)に故障が表示され、本館・南館のどこの客室でPAFMACに故障が発生しているのかが瞬時に把握できるようになっています。中央監視室のTACS(監視画面)にアラートが出れば、われわれが急行して現場を確認し、必要があれば修理する仕組みになっています。実際の故障件数も私が考えていたよりはるかに少なく、年に数回あるかどうかといったところですね」。
 京王プラザホテルでは、PAFMAC導入に当たってプログラムをカスタマイズすることで電気使用量を抑える工夫をしたが、日本ピーマックではこうしたプログラムだけでなく、さまざまなカスタマイズにも可能な限り対応するという。新築ホテルはもちろん、既存ホテルのバリューアップに一役買いそうだ。

週刊ホテルレストラン 2019年1月11日号掲載

京王プラザホテル
施設部副部長兼施設支配人 野呂 敏氏

ヒートポンプ付FCU PAFMAC

ファンコイルに小型ヒートポンプを組み込んだユニットを冷温水2管式回路に分散配置した個別空調システムです。