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日本ピーマック株式会社

プロジェクトストーリー

Vol.7ハイアット
リージェンシー
瀬良垣アイランド 沖縄

建築デザイン、ランドスケープとの調和。
ビーチリゾートホテルとして美観を損なわないための選択

ホテル名 ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄
住所 沖縄県国頭郡恩納村瀬良垣1108番地
開業年 2018年8月
客室 344

ホテル新築時にアイランド棟の
客室320室すべてに
「PAFMAC」を導入

 沖縄本島の西海岸、日本屈指のビーチリゾートとして知られる恩納村。その恩納村に沖縄本島から橋でつながる瀬良垣島にハイアット国内初となるビーチリゾート、ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄が2018年8月にオープンした。
 同ホテルは沖縄本島側に建つザ・ビーチハウス(24室)と瀬良垣島に建つザ・アイランド(320室)の2棟を擁し、6カ所のレストラン、バー、屋内外のプール、ラグーン、ビーチ、スパ、ウエディング施設などを付帯。特筆すべきはさまざまな海の景観を、360度見渡すロケーションだ。全客室がバルコニー付きで、エメラルドグリーンの沖縄の海を間近に見られるオーシャンビュー。窓を開け放つと海風が流れ込む。まさに自然に恵まれた沖縄を思う存分、享受できるのだ。しかしながら沖縄は、常夏と思われがちだが冬は思いのほか寒く、春先や秋口は寒暖差が大きく、一年を通してすべての利用者に快適な居住空間を提供するのは意外に難しいという。そこで同ホテルでは、ザ・アイランドの全室に日本ピーマックが提供するPAFMACを新築時に設置したという。PAFMACはファンコイルユニットにヒートポンプを内蔵した空調ユニットで、二管式でありながら個別空調を可能にするシステム。二管式冷暖房システムの改良施策として採用されることが多く、新築で導入するのは比較的珍しいケースと言える。新築時に導入した経緯について、同ホテルのエンジニア部長でこれまでホテルの設備に30年以上関わってきた経験を持つ金城 靖氏に伺った。

 「通常、ホテル空調システムは二管式、四管式などのセントラルヒーティングがスタンダードです。二管式冷暖房システムは、ボイラー室などの機械室でつくった温水や冷水を館内の配管を通して客室に運び、ファンコイルを介して温風や冷風に変える空調システムで配管に冷水が流れているときは冷房、温水が流れているときは暖房が可能となります。
 一方、四管式冷暖房システムは常時冷水と温水を流して通年で冷暖房フリーにできるのですが、配管の数が倍になり、配管スペースが増えることと常時冷水と温水をつくるためのコストもかさみます。また、四管式は冷凍能力800USRT程度のターボ冷凍機など大型冷凍設備が必要で、それに伴って付帯設備の冷却塔や冷温水ヘッダー、ポンプ群の設置も不可欠でホテルの限られたスペースにそれらの大型機器を設置するのは至難です。
 当ホテルの規模ですと、冷凍機の大きさは路線バス一台分ぐらいの大きさが必要になってきます。冷却塔も一戸建ての住宅ぐらいのスペースを用意しなくてはなりません。ゲストの目線に入る場所にこれらの設備があると美観的にも支障がありますし、もし設置するならばそれらをカバーするなんらかの意匠も必要になり、当然建築コストも上昇します。特にこのホテルは、面積が限られた瀬良垣島の中に建物も含めロケーションのすべてがデザインされていますので。この課題を解決するために各部屋にPAFMACを導入することを決めたのです。この判断によって大きな冷却塔や冷凍機の設備を圧縮することができました」。
 二管式冷暖房システムにしたことで冷凍機は、四管式の約4分の1程度の大きさに抑えることができ、これを顧客から見えない屋上に設置したことでホテルの美観を損なうことなく、ホテルの建物のデザインとランドスケープにうまく調和させることができたという。

PAFMACの個別空調で
沖縄の寒暖差や個人差に対応

 PAFMAC導入のメリットについて金城氏は次のように話す。
「これまでこのホテルでは空調に関するコンプレインはまったくありません。このホテルが開業する前に私が勤めていた400室規模のリゾートホテルでは二管式のセントラルヒーティングが採用されていましたが、それと比べると大きな違いがありますね。これまでの経験上、南国と称される沖縄でも春先は昼夜の寒暖差が大きく、送風でなんとかしのいでいました。冷暖房の切り替えの判断が難しく、ゲストの不満につながるのは避けられませんでした。
 また、沖縄の夏場は暖房の必要がないと思われがちですが、実はニーズはあるのです。例えば体調が悪い方、寒がりの方などがいらっしゃいます。そういう方から寒いので暖房を入れてほしいと言われたときは、毛布を持っていくとか、個別の暖房器具を持っていくなどの対応をするしかありませんでした。こうした事態にもPAFMACが対応できるので、お客さまの満足度向上につながっていると思います」。
 また、省エネルギーの観点からもPAFMACは効果を発揮しているという。
「通常、二管式冷暖房システムは、中間期は送風で快適な室温を保てるのでコストセービングができるのですが、インバウンドのお客さまとなると少し事情が違ってきます。暑がりの方が多く、真冬でも冷房をつける方もいらっしゃいます。こういう方が中間期に来て、冷房を入れたいというリクエストがあると、セントラル冷暖房システムの場合は冷凍機を動かさなくてはなりません。PAFMACならこうした数人のリクエストに客室単位で対応可能なので、冷凍機を回す必要がなく、燃料コストの大幅な削減になっていると思います」。
 同ホテルでは、客室の集中監視モニターを導入しているので全客室の空調の運転状況を監視することができる。実際に12月〜1月の冬季でも冷房を入れている客室もあるという。このほか客室の窓を開けるとPAFMACが止まるような機能も取り入れてコスト削減を実現しているそうだ。
 金城氏は開業から1年が過ぎて、これまでPAFMACの故障や不具合もないと語る。
 「PAFMACは、故障率が低いと伺っていますが、念のため故障した際にどのように対応するかをシュミレーションしています。当ホテルではPAFMACを数台予備で用意しておりますので、自社のメンテンナススタッフでどのぐらいの時間で取り替えが可能かを実証してみたいと思っています。空き室があればルームチェンジで対応できますが、満室の場合は、チェックアウトからチェックインまでの時間で対応できるのか、あるいはお客さまが昼間外出している間に交換可能なのかも含めて実験しようと思います」と、万が一のための準備にも余念がない。
 2020年3月末には、那覇空港第2滑走路の供用開始が予定されており、国内外からの観光客増加が必至の沖縄。ますます競争が激化するホテルマーケットにおいて一歩抜け出すための施策は不可欠だ。二管式冷暖房システムが主流の沖縄において、快適な客室環境を提供するPAFMACの導入は競合に打ち勝つ差別化の一つになるではないだろうか。

週刊ホテルレストラン 2019年11月22日号掲載

ハイアット リージェンシー
瀬良垣アイランド沖縄
エンジニア部長 金城 靖氏

ヒートポンプ付FCU PAFMAC

ファンコイルに小型ヒートポンプを組み込んだユニットを冷温水2管式回路に分散配置した個別空調システムです。