プロジェクトストーリー
Vol.10リッチモンドホテル
東京目白
個別空調の導入で、お客様ひとりひとりへ細やかな対応を実現。
ホテル名 | リッチモンドホテル東京目白 |
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住所 | 東京都豊島区目白3-5-14 |
開業年 | 2006年5月 |
客室 | 145 |
客室リニューアルを機に
空調もグレードアップ
アールエヌティーホテルズ(株)が運営するリッチモンドホテル東京目白は、JR山手線「目白」駅から徒歩約2分に立つ、客室数145室の宿泊主体型ホテルだ。ホテル予約サイトなどに投稿されるクチコミのスコアもよく、顧客からも好評価を得ている。
もともと同ホテルは1988年に建てられた既存ホテルを2006年に転貸借契約を結んでリブランドオープンしたもの。そのリブランドから10年の節目を迎えた2016年5月、約1カ月半をかけて、空調などの設備をはじめ客室、床壁、天井、家具などの備品を一新し、真新しい状態でリニューアルオープン。
「リニューアルのテーマは“Born”。生まれ変わることでした。客室は今後もインバウンドの増加が見込まれるので、それに対応すべく客室の大きさ、ベッドの数などを重点的に考えDORを上げることでADRの向上を目指しました。
また、建物は竣工から30年経過しているので設備類もかなり老朽化していました。そこで改装と同時並行で空調の更新工事を行なったのです」と同ホテルの改装当時の支配人で、現リッチモンドホテル東京水道橋 支配人の髙橋 愛子氏は話す。
設備の中でも特に重視したのが空調だという。さまざまな検討を経て、採用した客室空調機が日本ピーマック㈱が製造・販売する「PAFMAC」だったそうだ。
PAFMACの仕組みは、既存の二管式冷暖房システムを生かしながら冷暖フリーにすることができるシステム。二管式とは、ボイラー室などの熱源室でつくった温水や冷水を館内に張り巡らせた配管を通して客室に運び、室内に設置したファンコイルを介して温風や冷風に変えて室内に冷気や暖気を送る空調システム。配管に冷水が流れているときは冷房、温水が流れているときは暖房が可能となる。このファンコイルという空調ユニットに、冷水でも暖房を、温水でも冷房を可能にするヒートポンプを内蔵したのがPAFMACなのだ。
PAFMACの導入による
ホテル運営に生じる
メリットとは
そもそもホテルのリニューアルの際に空調まで見直した理由は、以下の通りであった。
「当館は、もともと冷温水の二管式冷暖房システムが導入されていましたので、改装前は春や秋に必ず部屋が暑い、寒いというクレームが多く寄せられていました。このクレームが空調を見直した最大の理由です。
当時の空調は客室に設置したスイッチにカードキーを差し込むと作動するシステムでしたので、入室後に空調が効き始めるまで時間がかかりました。夏季はチェックインの午後2時ごろの時間帯が最も暑く、特に海外からのお客さまは暑がりですのでクレームの声が多発していました。
クレームの件数が多いので、エレベーターの中に“このホテルは集中一括管理システムですから、暑い寒いがあったら個別対応をいたしますのでフロントまでご連絡ください”という案内文を掲示したほどです。貸し出し用の暖房器具や扇風機を何十台も備えていたので、倉庫はパンパンで毛布も山のように積んでいましたね」(髙橋氏)。
こうしたクレームに対する救世主がPAFMACだったのだ。そして、ホテル設備担当であり、アールエヌティーホテルズ(株)ファシリティマネジメント部部長の山本 裕一氏は次のように語る。
リッチモンドホテル東京水道橋
支配人 髙橋 愛子氏
「アールエヌティーホテルズでは、自社でホテル設計にも関与しております。その際は電気でコンプレッサーを回すEHP(Electric Heat Pump エレクトリックヒートポンプ)を導入したホテルが冷暖フリーになっています。その一方、当館では好みに応じた冷暖房の切り替えができないので、チェーンとしてサービスの水準に偏りが出てしまいます。そこで、なんとか既存の二管式冷暖房システムのまま、各客室が冷暖フリーにならないかを、空調システムのコンサルティングを依頼していた高砂熱学工業㈱に相談しました。そこで紹介されたのが日本ピーマックの『PAFMAC』でした。四管式でなくても冷暖フリーなのはとても魅力的に感じました」。
同ホテルでは、PAFMAC設置に合わせて集中監視盤(TACS)も導入し、オペレーションの軽減にも大いに役立っているという。TACSとは、すべての客室の空調スイッチと連動し、各客室の空調がどのような状態かを知ることができる上、遠隔で操作することも可能なシステム。フロントオフィスや機械管理室に設置すれば客室に出向かなくてもコントロールできるのが特徴だ。
「お客さまから内線で『ちょっと部屋が暑い』あるいは『寒い』と連絡が入った場合、TACSの画面で当該客室の実際の温度も把握できますし、冷房を使っているのか、暖房を使っているのか、あるいはスイッチそのものが入っていないということまで分かります。ですから、状況をお客さまに説明したうえで『こちらで暖房のスイッチを入れさせていただきます』や『いま暖房になっていますので冷房にさせていただきます』と返答しながら素早く対応ができるのです」(山本氏)。
さらにトラブルやメンテナンスの面でもPAFMACは優れているという。
「以前使っていた空調システムは1台の機械で10室程度を賄っていました。一部屋でも空調にトラブルが生じると、10室すべての空調を止めて修繕しなければなりませんから、当然その客室は販売できません。当時の客室稼働率は80%程度でしたから、何とかやりくりできましたが、今は95%近いので、もし旧システムを使い続けていてトラブルが起こったら経営的にも大きな損失になっていましたね。その点、PAFMACは室内機と室外機が一体型で客室ごとに独立していますから、もしトラブルが生じてもその部屋だけの売り止めで済みます。稼働状況が高いときにはこうしたことも安心感につながっています」(髙橋氏)。
アールエヌティーホテルズでは、リッチモンドホテル東京目白に先立ち、リッチモンドホテル札幌大通でもPAFMACを導入している。リッチモンドホテル東京目白でのPAFMAC採用は、二管式でも冷暖フリーを実現させたPAFMACの実力を評価した証しだろう。
週刊ホテルレストラン 2018年12月14日号掲載
アールエヌティーホテルズ(株)
ファシリティマネジメント部部長
山本 裕一氏