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日本ピーマック株式会社

プロジェクトストーリー

Vol.4西鉄ホテル
クルーム博多

二管式システムから個別冷暖フリーへ。
革新的空調機器
“PAFMAC”の実力

ホテル名 西鉄ホテル クルーム 博多
住所 福岡市博多区博多駅前1-17-6
開業年 2016年1月
客室数 503

リブランドに合わせ空調
設備もアップグレード

 西鉄ホテルグループが2016年に新たなセグメントとして立ち上げたホテルブランド「西鉄ホテル クルーム」。その第一号ホテルとして誕生したのが「西鉄ホテル クルーム博多」だ。西鉄インとして2007年に開業したホテルを大規模改修し、2016年1月にリブランドオープンした。JR博多駅から徒歩約4分、博多バスターミナル横に位置する至便なロケーションを誇り、客室数は503室。アジアンテイストの居酒屋、フレンチレストラン、割烹、日本料理レストランなどの飲食施設や温泉大浴場、会議室も付帯する。
「西鉄ホテル クルーム」は、西鉄ホテルグループが展開するフルサービスホテル「西鉄グランドホテル」、都心型ホテル「ソラリア西鉄ホテル」、宿泊特化型ホテル「西鉄イン」に加わったコンセプト型ホテルを掲げるブランド。旅先の家となる「寛ぎ」、旅先の地としての「喜び」を提供するホテルとして COMMUNICATION(交流)、CHEERFUL(快活な)、 COMFORTABLE(快適な)、CREATIVE(創造的な) の頭文字C+ROOM=CROOM(クルーム)と名付けられたという。
 新ブランドのお披露目となった博多では、リブランドに際して大規模リノベーションも実施。共用部にラウンジを新設し、フロントには独立型のカウンターなどを設けてドリンクサービスの充実や、香りの演出などによる居心地のよい滞在空間を実現した。客室の内装も一新し、併せて空調の見直しも図ったという。小野 浩志支配人はその理由を次のように語る。
「建物は新築から約10年しか経過していなかったので、老朽化はしていませんでした。しかし建設当初に設置した冷暖房システムは二管式だったので、客室ごとに冷暖房を選ぶことはできません。そのため真夏の冷房期間と真冬の暖房期間は問題ありませんが、春、秋の端境期は空調に対する課題がありました。

福岡のビジネスホテルに泊まるお客さまは、夜、お酒を飲んで帰ってこられる方が多く、空調に対してストレートに苦情を申し出られるので対応が大変でした。また、ネットからの予約が多くなり、宿泊した方から部屋が暑い、寒いという口コミが掲示されるようになりました。口コミの影響は大きいですからね。これは非常に気にしておりました。ネガティブな口コミは避けたかったので改装にあたってこの課題をぜひ解決したいと考えていました。そこで候補にあがったのがPAFMACでした」。  二管式冷暖房システムとは、ボイラー室などの機械室でつくった温水や冷水を館内の配管を通して客室に運び、ファンコイルを介して温風や冷風に変える空調システム。配管に冷水が流れているときは冷房、温水が流れているときは暖房が可能となる。従来、通年で冷暖フリーにするためには、常時冷水と温水が流れる四管式冷暖房システムを導入するのが一般的だった。
 こうしたそれまでの常識を打ち破った商品が、日本ピーマックが提供する「PAFMAC」なのだ。「PAFMAC」は客室内に設置するファンコイルという空調ユニットに冷水でも暖房を、温水でも冷房を可能にするヒートポンプを内蔵しており、既存の二管式冷暖房システムを生かしながら冷暖房フリー化できる。実際の取り付け工事は、既存のファンコイルユニットを取り外し「PAFMAC」と交換するだけで大がかりな作業は必要なく、騒音もほとんど出ない。営業を続けながら部屋単位・フロア単位・配管系統単位で施工することも可能なので、客室の売り止めを最小限に抑えることができる。

冷暖房フリー化に小ロットでも
カスタマイズできる
PAFMACをセレクト

 同ホテルでは冷暖フリー化の検討を進める際、こうした「PAFMAC」に魅力を感じたものの一つの大きな課題があったという。それは客室の天井裏に既存の「PAFMAC」を設置できるスペースがなかったこと。
「PAFMACは標準品の高さが375mmなのですが、当ホテルの客室の天井裏はそれだけのスペースを確保できなかったのです。そこで日本ピーマックに相談したところカスタマイズに応じてくれたのです。大手の空調メーカーはカスタマイズに対応してくれませんが、日本ピーマックは、小ロットでも対応してくれて助かりました」(小野支配人)。
 今回のカスタマイズは、ベースになる技術は既存のものから流用したが、ユニットとしては完全に新規開発商品となったという。ユニットの高さを250mmまで抑えるために縦型のコンプレッサーを横型に変えて対応したそうだ。
「当ホテルでは503台をカスタマイズしましたが、その後、同グループが出店する新宿のホテルに300台、日本橋のホテルに250台PAFMACを導入しました。これはさらに小さいサイズになったと聞いています」(小野支配人)。

快適な客室空間が新たな
顧客層の開拓に寄与

小野支配人は「PAFMAC」にさまざまなメリットを感じているという。
「最大のメリットはもちろん季節の端境期にも冷暖フリーが可能になったこと。PAFMAC導入以前は、冷暖房の切り替えをいつ行なうか大変苦慮していました。毎日苦情の数を把握し、天気予報を確認しながら、最後はスタッフの経験に基づいて判断していました。多いときは1日10件の苦情があるときもあり、これはお客さまにとってもストレスですが、ホテルのスタッフにとってもストレスが掛かります。暑いときは扇風機を部屋に持っていき、寒い時期はオイルヒーターや毛布を貸し出すという対応でした。これらをストックしておくにもスペースが必要ですからね。空調が改善されたいまは必要なくなりました。
 また、PAFMACはファンコイルとヒートポンプの二つの機能をもっているので空調機2台分の能力があることです。例えば、近年多くなってきた猛暑日の場合など、2台分の能力で一気に客室の温度を下げることができるのもメリットだと思います。
 当ホテルはリブランドの際の改修工事期間中、営業を休止することなく、2~3フロアごとに工事を実施しました。このホテルは駅も近く、稼働率もよかったので休業してしまうと顧客が離れてしまいますから。そういう意味でもPAFMACは取り付け工事の騒音がほとんどなくてとても助かりました」。
 博多駅前エリアでは新しいホテルが続々オープンし、ますます競争が激化している。そんな中、同ホテルは「西鉄ホテル クルーム 博多」へのリブランドに加え、館内設備のバリューアップを図ったことで競合ホテルとの差別化に成功した好例となっている。
「お客さまの口コミで空調がよかったというコメントはなかなか出てこないものです。しかしネガティブなコメントはすぐに書き込まれます。PAFMACを導入してからは、そうした口コミがなくなり、新たな顧客層の集客にも寄与していると思います」。
 同ホテルの顧客層は、今では発信力のある女性比率が約45%に上昇。レディースフロアから予約が埋まっていくという。

週刊ホテルレストラン 2019年11月8日号掲載

西鉄ホテル クルーム博多
支配人 小野 浩志氏

ヒートポンプ付FCU PAFMAC

ファンコイルに小型ヒートポンプを組み込んだユニットを冷温水2管式回路に分散配置した個別空調システムです。